芥川賞を射止めた市川沙央さん、10年前に八洲学園大学で学んでいた頃、大学のインタビューに答える様子が既に大物を予感させるものでした。
◎ニュース記事
◎ニュースのポイント
「ハンチバック」(文学界5月号)で芥川賞に決まった市川沙央さん(43)は19日夜、東京都内で記者会見し、「非常にうれしく、我に天祐(てんゆう)あり、と感じております」と感慨を語った。
「私は一つ訴えたいことがあって、去年の夏に初めて純文学を書きました。それが『ハンチバック』です。なので、こうして芥川賞の会見台に取り次いでいただいたことは非常にうれしく、我に天祐あり、と感じています」
「芥川賞を全然目指してはいなかったので、驚いています。この場所はニコニコ(動画の生放送)でよく予習していました。ああ、こういう感じかと感慨深いです」
「芥川賞でも重度障害者の受賞は初でしょうが、どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか。それをみんなに考えてもらいたい、と思っています」
「私が一番訴えたいのは読書バリアフリーが進むことです。とにかく読みたい本が読めないのはかなり厳しいものがあるので、環境整備を進めてほしいと思います」
「いろんなものを、いろんな視点で、いろんな角度から書いていきたいと思っています」
「ちょっと生意気なことを言いますけど、各出版社の方々、学会誌とかの電子化がなかなか進んでいません。そういうものの障害者対応を、もっと真剣に早く取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。」
◎八洲学園大学時代のインタビュー
市川沙央さんは八洲学園大学の通信制に在学していたことがあるようです。その時のインタビューが既に大物を予感させます。
通学不要という八洲学園大学に2012年に入学し、学芸員資格取得を目指していた頃のインタビューです。
・大物を予感させるインタビューの内容
◇学生支援センター
市川さん、こんにちは。よろしくお願いいたします。
市川さんは、2012年4月に特修生として入学され、2013年4月より正科生になられました。本学に特修生制度があることは、どこでお知りになりましたか。
◆市川さん
大学のウェブサイトだったと思います。特修生制度というものについては通信制大学に興味を持つ過程で知っていました。
中学生のころに持病が悪化して外出することが困難になって以来、勉強を続けたいという思い、特に大学への憧れをずっと持っていて、十年以上前からときどき通信制大学の資料を取り寄せていました。
でも、特修生制度のあるところは限られていて、それに通信制大学といっても、少し前までは、スクーリングと単位修得試験は会場に赴かなければいけないところがほとんどでした。今もって来校不要の大学はごくわずかですよね。私の場合、どうしてもそれは壁でした。福祉系の分野なら重い障害を持つ学生への配慮があるところが見つかったのですが、私が勉強したいことはそこにはなかったので。
私は歴史や文学、美術といった分野が好きで、体力を費やして勉学するなら四年制大学卒業資格はもちろんですが、学芸員資格も取得したいな、と思っていました。
◇学生支援センター
いろいろな通信制大学と比較して、本学を選んでいただいたんですね。ありがとうございます。本学に入学しようと思ったきっかけは、なんですか。
◆市川さん
実は、八洲学園大学との出会いを果たす直前、2012年の1月のことでしたが、もう本当にどうしても大学を諦めきれない思いが盛り上がって、学芸員コースと特修生制度のある某大学の通信制学部にかなりしつこく食い下がってみたのです。
「私には家から半日かけて外出する体力はありません」「でも、このインターネット社会でなら、私にも社会のために何かできることが見つかるかもしれない。そのために専門的な学問を身につけたいんです」「どうにか方法はありませんか」というふうに。でも例外は認めてもらえませんでした。
とても落ち込んだのですが、じゃあ他は!と諦め悪くインターネットをうろうろしていたところ、探し当てたのが八洲学園大学でした。いつの間にこんな大学ができていたんだ、と驚きました(笑)。
「学芸員資格」「来校不要」「特修生制度」が揃っている八洲学園大学は、私のためにあるような大学でしたね。あの「もういちど大学を探してみよう」というひらめきと盛り上がりは、いま考えると不思議です。
◇学生支援センター
本学を探し当てていただき、ありがとうございます!実際に入学してみて、入学前と印象は違いましたか。
◆市川さん
学校という場所から長く遠ざかっていたこともあって、入学前は大学の勉強がどういうものか、在宅とはいえスクーリングに体がついていけるかなどなど、不安はありました。通信制大学というのはモチベーションの問題もあって卒業が難しいというのは一般的に聞く話ですし。それと、特修生というのは高校卒業程度の能力を試される期間なわけですが、いまさら高校の勉強だいじょうぶ?! と両親からも心配され・・・。
実際は、正科生と同じ科目を履修し、レポート作成中心の勉強で、大学卒業への自信をつける期間になりましたね。
不安があったスクーリングも、始まってみると、画面越しに世界が広がる感じが楽しいばかりで。先生はどなたも丁寧で親切です。出席を取られるなんて久しぶりすぎて、最初はそれだけで感動していました!
万が一体調を崩すようなことがあっても、再配信授業・オンデマンド受講などで簡単に追いつけるので、安心感があり、無理を感じません。
◇学生支援センター
良い意味での印象の違いがあったようで、安心いたしました。とくに、本学に入学してよかったと感じるのはどんなところですか。
◆市川さん
それはもう、「私、大学生なんだ!」という嬉しさですね。大学の勉強をしているんだ! という。十代、二十代と、独学で本だけは読み続けてきましたけれど、それだけではどうしても趣味の範疇から抜け出せませんでした。ごく普通に大学を出て働いている人との間にコンプレックスを感じていました。具体的に言えばそれは、私にとって未知の経験を経てきている人たちへの畏怖であり憧れだったわけです。いざ大学へ入ってみると、ああ、皆こういうことをしていたのか、と。私にも充分できるじゃないか、と。
◇学生支援センター
4月から正科生になり、ついに「女子大生」ですね!本学の学習スタイルが合っているという市川さんですが、大変だと感じることもあるかと思います。それについては、いかがですか。
◆市川さん
八洲学園大学は社会人向けの大学という面がありますので、スクーリング授業のチャットやディスカッションでは人生経験を元にした意見を求められることもあります。他の皆さんはそれぞれ多様な社会人経験をお持ちで、病気以外にたいした人生経験のない私などは、気後れする部分もあります。
例えば、生涯学習関連の授業で言及された「ハローワーク」や「ジョブ・カード」は、経済や働き方に関する政策についての時事ニュースや政治議論にも登場するキーワードですが、名称くらいは知っていても、全く関わったことのない世界でした。授業のディスカッションの中で他の皆さんの経験を共有し、それらの仕組みを理解していったことは、社会に関する自分の考えを持つうえで、得難い経験となっています。私がディスカッションで発言するときは、書生論というか、本で読んだり聞きかじった知識だけで挑んでいたので、後から考えると恥ずかしくもなります。でも、よく食らいついていたものだと、感慨深くもあります。
レポート作成についても当てはまるのですが、本で読んだり聞きかじった知識でも、ないよりはましで、普段からアンテナを広げておくことは大事だな、と再認識しました。断片でも集めておくだけ集めておけば、「あれをテーマにしたらどうかな」というひらめきにつながり、ものごとを掘り下げるきっかけになります。何が持ち球に化けるか、案外わからないものです。
◇学生支援センター
本学では、さまざまな年齢や職業の方が学ばれていますので、授業中のチャットやディスカッションでは、多様な意見が飛び交い、盛り上がります。いろいろな授業を受けて、さらに市川さんの世界を掘り下げていってほしいと思います。
では、そんな市川さんのこれからの目標を教えてください。
◆市川さん
学芸員資格と学士の学位の取得を目的に入学しましたので、これから4~5年をかけて実現したいです。無事に特修生から正科生になり、これからというところです。
最初は単位を取れただけで嬉しい、ホッ、という気持ちでしたけれど、大学での勉強というのは深く潜ろうとすればいくらでも潜れるものなので、頑張ってレポート内容の精度を上げていきたいと思っています。
目下のところ、テキスト履修科目でも積極的に先生に質問できるようになることが目標です。学内SNSでほかの学生さんたちと情報交換していると、皆さんが質問機能を活用した先生とのやりとりの中で課題の理解を深めていらっしゃるのが分かり、私も遠慮したり恥ずかしがっている場合じゃないな、と思いました。それを含めて学問なんだなと、「一年生」の新学期を前に意欲を新たにしています。
そうそう、先日Ustreamで配信されていた学位記授与式を拝見していましたが、意外と、と言っていいのか、先生方が学生さんのことを一人一人覚えていらっしゃるのが印象的でした!
◇学生支援センター
多くの学生さんが一度も通学することなく卒業されますので、学生さんと先生が顔を合わせることは滅多にありません。でも、質問機能を利用したやりとりなどの中で、先生も学生さんの「顔」を自然に覚えるようです。
最後に、これから入学する方に向けたメッセージをお願いいたします。
◆市川さん
八洲学園大学の好きなところは、欧米的な完全セメスター制(春からも秋からも入学可能)を取っている点で、まさにこれからの日本が目指すべき生涯学習社会を体現する学び舎だと思います。誰もが、学びたいときに学べる。「いま、学びたい」というすべての人に開かれているのが、八洲学園大学です。バリアフリーです。
どんなに〈学び〉から遠ざかっていた人でも、むしろ長らく遠ざかっていた人こそ、八洲学園大学に入って経験する一つ一つを新鮮に感じ、一つ一つ〈学び〉を取り戻していく感動を味わえると思います。それって、〈学び〉という名の青春なのかもしれないです。大学、楽しいですよ!
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